RPAの勉強方法(学習プロセス)について、私見を述べます。資格を取得するための勉強方法ではなく、実践をより重視した内容になっています。何かしら、今後の勉強の参考になればと思います。
1. RPAの非効率的な勉強方法
効率的な勉強方法を考える前に、先ずは「非効率的」な勉強方法を考察してみましょう。RPAの勉強を始めてみたが、思うように上達せず、悩んでいるという方は少なくないと思います。ベンダーが提供する動画教材を視聴したり、市販の本を読んだりしているが、実際の業務をワークフロー化する実力が、一向に身につかないと感じたことはないでしょうか。
上記のような悩みを抱えている方は、概ね、RPAソフトの「機能」をひたすら暗記するような勉強をしていると思います。もう少し、分かりやすい例え話をしましょう。「レゴブロック」を思い浮かべてください。あなたは、今、様々なレゴブロックの形や色などの特徴を勉強しています。
しかし、いくら個々のレゴブロックの「特徴」について詳しくなっても、あなたはレゴブロックを組み立てて、何かを作れるようにはならないでしょう。なぜなら、あなたはレゴブロックの「組み立て方」を知らないからです。
RPAの勉強についても同じようなことが言えます。RPAソフトの「機能」を中心に勉強するのではなく、ワークフローの作り方に重点を置いて勉強する必要があります。機能は数が多く、変化していく可能性があるため、すべてを理解するのは困難です。一方、ワークフローの作り方は汎用的な概念なので大きく変わることはなく、代表的なものを幾つか理解すれば応用も利きます。
結論を述べると、RPAの効率的な勉強方法では、以下の要素をバランス良く勉強します。
- 【要素1】RPAソフトの最低限の機能
- 【要素2】ワークフローの汎用的な作り方
- 【要素3】多くの業務に共通するデザインパターン
RPAが上達せずに悩んでいる方の多くは、【要素1】の習得に時間をかけ過ぎて、立ち止まっている状況だと思います。それだと、いつまで経っても上達しない危険性があります。【要素1】を早めに切り上げて、【要素2】以降のコア部分の勉強に着手しなければいけません。
2. RPAの効率的な勉強方法
ここからは、RPAの効率的な勉強方法(学習プロセス)について考察します。RPAに限らず、何かを勉強する際は、以下のフレームワークで考えると良いでしょう。
- Why(なぜ勉強するのか)
- What(何の要素を勉強するのか)
- How(どのように、どのくらい勉強するのか)
2.1. Why(なぜ勉強するのか)
勉強する前に、なぜ勉強するのか考えることは大切です。それによって、目標到達地点や学習期間がおよそ決まるからです。つまり、モチベーションを保ちつつ、計画的に勉強を進めることが可能になります。RPAを勉強する理由は、例えば以下のように大きく分類できると思います。
- すぐに業務等で必要だから(緊急度:高)
- 将来的に業務等で必要になりそうだから(緊急度:中)
- 個人的に興味があるから(緊急度:低)
以下、各緊急度に対する、私が考える「処方箋」です。参考程度にご覧ください。
すぐに業務等で必要だから(緊急度:高)
あなたがエンジニアでなければ、短期間でRPAのスキルを習得するのは極めて困難だと思います。残念ですが、自分で習得するのは一旦諦めて、外部リソースなどを上手く活用するように方向転換した方が良いです。優先すべきはスキルの習得ではなく、自社等における業務効率化(生産性向上)です。「手段」は柔軟に考え、「結果」をより重視しましょう。
将来的に業務等で必要になりそうだから(緊急度:中)
必要になってから慌てて勉強しても「時すでに遅し」です。あなたがエンジニアでなければ、あまり猶予はないと思います。すぐに勉強を始めなければ間に合わなくなるでしょう。RPAは汎用的なスキルなので、勉強しておいても無駄にはならないと思います。勉強すべき要素と進め方については、以下の「2.2. What」と「2.3. How」の節をご覧ください。
個人的に興味があるから(緊急度:低)
さほど必要に迫られていないため、特にRPAの勉強はしなくてもよいと思います。あなたがエンジニアでなければ、中途半端に手を出すと、習得できずに終わる可能性が高いです。お金や時間のリソースは有限なので、あなたの専門分野の知見を深める方にリソースを割り振った方が、キャリア的にプラスだと思います。
2.2. What(何の要素を勉強するのか)
冒頭でも述べましたが、RPAで勉強する要素は大きく以下の3つです。
- 【要素1】RPAソフトの最低限の機能(約20%)
- 【要素2】ワークフローの汎用的な作り方(約50%)
- 【要素3】多くの業務に共通するデザインパターン(約30%)
【要素1】RPAソフトの最低限の機能
「機能」の習得という深みにハマって、身動きが取れずにリタイアしてしまうケースが多いと思います。少し視野を広げてみましょう。「最低限」の意味が分からないため、必要以上に「機能」の暗記に走ってしまいます。一度、立ち止まりましょう。その先にゴールはありません。
先ずは、「最低限」が何かを知りましょう。とりあえず、以下の項目に絞って勉強してみましょう。既に勉強済みの方は、「要素2」以降の勉強に早く進みましょう。
- 基本的なUI操作(Webブラウザ/ローカルアプリ)
- データ取得(文字列/テーブル)
- テキストファイルの読み書き
- Excelファイルの読み書き、追記(セル/範囲)
- メールの送信(※受信メールはあまり使わない)
- テキスト処理(Replace/Match)
【要素2】ワークフローの汎用的な作り方
ワークフローの汎用的な作り方とは、何を勉強すればよいのでしょうか。これについては、とりあえず、以下のプログラミングの概念について勉強してみましょう。具体的に何を勉強すればよいか分からない方は、こちらのブログをご覧ください。使い方4~6の課題を勉強すれば、構造化プログラミングの基礎についてはカバーできると思います。
- 構造化プログラミング(順次、反復、分岐)
- サブルーチン(関数)
【要素3】多くの業務に共通するデザインパターン
多くの業務を自動化する上で、共通するパターンが存在します。武道でいう「型」のようなものです。とりわけ、高い費用対効果が期待できる自動化の方法は、お決まりのパターンになっています。
例えば、大量の件数を処理する業務においては、「反復」+「例外処理」+「リトライ可能」の概念を組み合わせることで、安定性が高く、効率的なワークフローを作ることができます。
多くのケース課題に取り組むことで、デザインパターンの知見を積んでいくことができます。知見が深まれば、業務を見た瞬間に、「あのパターンで自動化できそうだ」と閃くようになります。ケース課題のサンプルは、こちらのブログをご覧ください。
2.3. How(どのように、どのくらい勉強するのか)
最後に、どのように、どのくらい勉強すればよいのかについて考察します。「学習プロセス」と「達成基準」の2つの視点で考えます。
学習プロセス
RPAに限らず、変化が速い分野を勉強する場合は、「学習プロセス」がとても重要になります。
従来の一般的な学習プロセスでは、先ず知識の習得に多くの時間をかけます。そして、基礎演習、応用演習と続きます。全範囲を網羅した後に、ようやく実務・実践に入ります。この学習プロセスでRPAを勉強すると、高い確率で失敗すると思います。冒頭でも述べたように、知識の習得フェーズにて、終わりのない旅に突き進むことになります。つまり、機能の暗記に終始してしまい、ワークフローの作り方やデザインパターンの勉強に入れず、リタイアする可能性が高くなります。
では、どのような学習プロセスで勉強すべきか。おすすめの学習プロセスでは、先ずは最低限の知識の習得を行います。その後、すぐに実務・実践に入ります。最初は全く歯が立たないので、こまめに知識の整理を行います。このサイクルを高速回転させます。知識の整理でフィードバックが入るので、知識の吸収率が高まり、上達が早くなります。
実務・実践フェーズでは、出来る限り、業務に近いレベルの課題に取り組みましょう。動画教材や本の演習課題は、機能を紹介する目的で作られたものが多いため、あまり実践向きではありません。自社で自動化してみたい業務などがあれば、それを利用するのも一つの手です。
達成基準
では、上記の学習プロセスで、一体どのくらいサイクルを回せばよいのでしょうか。これを考えるには、知識やスキルがどれだけ定着したかを「定量化」する必要があります。RPAの勉強の場合は、ワークフローを作成する時間をメイン指標とし、正確さ(ミスの少なさ)をサブ指標にするのが良いと思います。
RPAのスキルの高低は、ワークフローの実装速度に如実に表れます。明確な数値として出るため、言い訳が出来ない指標となります。適切な制限時間をクリアできるようになれば、それに見合う知識やスキルが定着している証明とすることができると思います。
ワークフローを実装する度に時間を測定してみましょう。同じ課題に何度か挑戦してみましょう。実装時間が短くなっているかチェックしてみましょう。現状のさらに半分の時間で実装できるように努力を重ねれば、きっと大きな自信に繋がるでしょう。
3. まとめ
RPAの勉強方法(学習プロセス)について、私見を述べました。色々と書きましたが、一番言いたかったことは、機能の暗記から抜け出し、ワークフローの作り方やデザインパターンの勉強に進みましょうということです。頑張ってください。応援しています。
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