今回は中小企業向けに、RPA(Robotic Process Automation)を導入する上で、失敗確率を大幅に下げる根本的な考え方を紹介したいと思います。内容は私の個人的な考え方や経験に基づいているので、場合によっては全ての項目が有益とならない可能性もあります。ただ、出来るだけ本質部分に焦点を当てるようにしたので、状況に応じてカスタマイズしながら取り入れて頂ければと思います。
1. 「目的」と「手段」を取り違えるな!
要点解説
- 業務を自動化すること自体が「目的」ではない
- 業務を自動化するのは「手段」の1つである
- 油断すると「手段」が目的化してしまうので常に意識すること
- 「目的」は生産性を向上させることである
- つまり、自動化した結果、コストよりも大きな効果を生むことである
- 効果とは作業時間の削減、作業者の負担軽減、作業ミスの防止などである
- コストとはライセンス料金、開発や運用保守の費用などである
- 採算を考えずに何となく自動化するのは危ない
2. RPAツールの選定に時間をかけ過ぎるな!
要点解説
- ツールの選定に成功などない
- 失敗してしまう確率が高いので、あまり深く悩まないこと
- ツールの選定よりも、「目的」の達成に時間を使うこと
- ツールは「シェア」「料金」「機能」の軸で大雑把に選べばよい
- 難しい場合は、「シェア」と「料金」だけでもよい
- 特に重要なのは「シェア」である(勝ち馬に乗る)
- 「シェア」が大きいとユーザー数や情報量が多くなるので何とかなる
3. RPAを使いこなすにはプログラミングが必要だ!
要点解説
- もはや避けることはできない、逃げてはいけない
- 確かにプログラミングなしでもRPAは「使える」
- だが、それで出来る範囲は狭く、効果を生むのが難しい
- 業務を自動化するにはプログラミングの考え方が欠かせない
- 特に「反復処理」「条件分岐」「テキスト処理」が重要
- 「RPA独自の機能」×「プログラミング」で効果を最大化させる
4. 自動化する対象を間違えるな!
要点解説
- 何でもかんでも自動化させるのは思考停止である
- コストよりも大きな効果を生むものだけ選定して自動化する
- つまり、「
効果 - コスト > 0
」である - 概算でいいので、事前に効果とコストを試算すること
- 特に効果が大きいのは以下の3つである
- 「ボリュームのある作業」「高ストレスな作業」「ミスの影響が大きい作業」
- 自分なりのモノサシを持っておかないと迷走してしまう
5. 完全自動化など目指すな!
要点解説
- 完全自動化は魅力的だが、開発コストが高くつく
- コストが効果を上回ってしまう可能性が高い
- 最初から最後までを完全に自動化するのは諦めること
- 採算を考慮した現実解に落とし込むこと
- ボリュームゾーンを部分自動化するだけでも効果は大きい
- 最初と最後に人間が介在しても、全体の効率はあまり下がらない
- 「人間」と「ロボット」のハイブリッドで効果を最大化させる
まとめ
今回は中小企業向けに、RPA(Robotic Process Automation)を導入する上で、失敗確率を大幅に下げる根本的な考え方を紹介しました。結論としては、効果とコストを常に意識しながら進めていく必要があるということです。油断していると、RPAで自動化すること自体が「目的」になってしまいます。最終的に採算が取れず、RPAを導入した意味がなくなってしまう危険性があります。
もし、事前に試算した結果、全体的に採算が取れない状況であれば、無理にRPAを導入する必要はないと思います。RPAで自動化するのは「手段」の1つでしかないので、別の「手段」にも目を向けてみるのがよいでしょう。重要なのは、「手段」に固執することではなく、「目的」を達成することです。