本シリーズでは、ITスクール「First」の事業運営におけるIT・デジタル活用の具体的な事例をご紹介していきます。今回は、電子契約のクラウドサービス(SaaS)を導入して、スクールの申込手続きをオンライン化したいと思います。
1. 課題設定(ストーリー)
現在、当ITスクールでは、初回の申し込み時に手書きサインの「申込書」を提出して頂いています。ある日、ITスクールの代表は思いました。
「ITスクールの申込が手書きって何だかな」
「個人情報も含まれるし、セキュリティ面でも心配かも」
問題意識はありましたが、すぐに困ることはなかったので、従来のプロセスを変えることなく放置していました。しかし、最近、DXなる概念が流行ってきたこともあり、このままではいけないかもと感じ始めました。
「申込者の作業負担が地味に大きいかも」
「何とか効率化して、簡単に申込できるようにしたい」
そして、遂に重い腰を上げました。顧客(申込者)に負担をかけている手続き方法に終止符を打つ時がやってきたのです。
「最近は電子契約が話題になっているよな」
「今時のクラウドサービスを使えば、オンライン化できるかも」
早速、ネットで電子契約のクラウドサービスについて検索してみました。思った通り、幾つかサービスが見つかりました。比較検討した結果、今回はフリー枠でサービスが利用できる「クラウドサイン」を試してみることにしました。
「よし、このサービスを導入して、顧客の負担を減らすぞ!」
2. 解決方法
電子契約のクラウドサービス(SaaS)である「クラウドサイン」を導入して、スクールの申込手続きをオンライン化します。作成済みの申込書(PDFファイル)をクラウドサイン上にアップロードして、入力欄などの設定を行い申込者に送信します。
申込者は受信した案内メールに記載されたリンクを開き、オンライン上で申込書に必要事項を入力し、そのまま提出を行います。その後、スクールと申込者の双方にサイン済みの申込書(PDFファイル)が届きます。
下記にシステムの全体像を示します。
構成要素 | 備考 |
---|---|
クラウドサイン(SaaS) | ・アップロードされた申込書のリンク情報を申込者に送信 ・電子サイン済みの申込書を管理者と申込者に送信 |
申込書(PDFファイル) | スクールに入会する際の申込書(事前に作成しておく) |
3. 実行結果
実際には、下記のような申込書をクラウドサイン経由で申込者に送付することになります。
4. 考察
今回は、電子契約のクラウドサービス(SaaS)を導入して、スクールの申込手続きをオンライン化しました。結果的に、下記のようなメリットがあったと思います。
- 申込者の作業量が大幅に減った(UX「ユーザー体験」の改善)
- 個人情報の取扱いに関するリスク軽減が期待される(情報セキュリティの強化)
今回は顧客(申込者)の作業面での効果が大きかったと思います。手書きサインで提出する場合と比較すると、作業量は1/5以下になっているのではと感じます。大幅な効率化によって、顧客のストレスが軽減されると思われます。
一方、手続きをオンライン化することで、スクール側での作業量が微増しました。しかし、そこまで気になる程度ではありません。顧客側の負担軽減のメリットを考えると、問題なく許容できるレベルだと判断しています。
また、オンライン化することで、個人情報の取扱いに関する作業ミスなどのリスクが減ることも期待されます。勿論、利用するクラウドサービス自体のセキュリティが安全だということが前提なのですが。この点については、何をどこまで調査すれば安全か、個人で判断するのは難しいと感じています。一般的には、ユーザー数が多く、実績もあるサービスを選択するのが良いかと思われます。
なお、今回利用した「クラウドサイン」のサービスでは、取り扱った申込書のデータがクラウド上に保管され、ユーザーが自由に削除することができないようです(本記事執筆時)。この点を考慮して、個人情報がクラウド上に残ることを懸念する顧客に対しては、別の手段を提案しようと思います。